「刹那、きいちゃん手放すなよ。本性がバレても何がなんでも」

「大丈夫、俺はもう手放せないとこまで来てる」



本性?もうバレバレな気がしますけど。

それともまだ他に隠してることがあるんでしょうか。

……はっ、DVとか?それは絶対ダメですよ!



「きいちゃんは俺のこと手放したりしない?」



ひとり歩きする思考は、刹那くんの憂いを帯びた瞳を前に消えた。

そんな綺麗な顔して、人より優れた頭脳を持っていて、何がそんなに不安なんでしょうか。

その不安を吐き出してほしいけど、関係が浅いから聞き出せない。



「だから、その顔ずるいです」

「まあきいちゃん、俺の顔大好きだから大丈夫か」

「顔だけじゃないですけど……とにかく暴力沙汰を起こさない限りは嫌いになりませんよ」

「そっか」



気持ちを切り替えた刹那くんは手を繋ぎ、目的地に向けて歩き出す。

だけどその横顔は少しさみしそうに見えた。