相川くんはギャップに弱い

「何言ってんの?どうでもいいやつだから呼べるんだよ簡単に。だよね、きいちゃん」



殺気を含んだ表情だったけど、燈くんは尻込みせずに私にウインクしてきた。

この人、肝座りすぎでは?

それとも慣れ?どちらにしてもただ者じゃない。



「認めたくないけど……そうですね。
刹那くんって気軽に呼べなかったのは、好きだったからこそです」



とりあえず刹那くんの注意を引くために、恥ずかしいけど本音を伝えた。

すると両手を広げていきなり抱きついてきた。



「燈、聞いた?俺めっちゃ愛されてんじゃん」

「もう、道端で抱きつくのはやめてください!」



こうなるから、できるだけ本音は言いたくなかったのに!

ところ構わずスキンシップを図ろうとする癖は治してほしい。

抱きついて全身で喜びを表現する刹那くんだったけど、背中側から振動がしてパッと離れた。

位置的に胸ポケットに入れたスマホでしょうか。

刹那くんは「嫌な予感する〜」と言いながら予想通り胸ポケットからスマホを取り出した。