ノート


ははっ、と彼が笑った。俺も笑うふりをした。
うまく笑えないのは、やっぱり騙しているみたいで苦しい。

「逃げなんじゃないのか」と、いつか、言われたことがある。
「大事なものを選べないならみんな失うかもしれない」と。

 色組になるのが嫌だったし、大事なものを選べなくて失うのなら大事なものは何も選ばなければいいと思っていた。
俺としては逃げたわけじゃなくて、明確な意思を持ったつもりだ。選ぶ必要も叶う意味もないから独りになるよていだった。

__そんな覚悟は甘い、とバチがあたったのだろうか。

「あー、あ。ずるい……」
「何が」

俺はなにも言わず弁当を全部平らげてから、こっそり呟いた。
 意地でも選ばなきゃいけないような、この状況が。
放課後。
河辺の姿を探してもいないから、いろんなやつに聞いて回った。
どうやら彼はもともと、滅多に登校しなかったらしい。
理由を聞いても誰もが笑顔で話題を逸らしていたけど、たぶん、彼は孤立しているのだろう。

 俺の前でも妙な奇声をあげたり、空気を読まずに牛か瓜坊みたいに体当たりしてくるところはあった。ただ、原因はそれより根本的な部分な気がした。
 詮索しすぎもよくないし、部活に顔を出すかと廊下を歩いた。
河辺が学校に行きたがらなくても俺とは関係がないし、彼の問題だった。 けれど一応付き合ったぶん、俺は、なにかすべきなのだろうか?

 考えていると部室までついていた。