嬉しい、と感じた経験は久しぶりで、俺の精神環境が少し改善していることを表してる気がする。
「やっぱり、お前は元気な方が俺も、嬉しい。よかったー」
胸を撫で下ろす仕草をされて、俺の箸を持つ手が止まる。ぽろっ、とたまごやきを落としかけた。
「な、なにそれ。でも、ありがとな。心配してくれて」
その曇りのない笑顔を見たら、俺はどれだけ不安がらせていたのだろうと思った。
もう心配させたくない。
……この腕のことは、だから俺だけの秘密だ。
なるべく直視せず、右手の袖をぎゅっとつかんだ。
まるであのノートと一緒だなと嬉しくなる。普段は奥に大事にしまってあって、俺しかその痛みを理解出来ないのだろう、というところが。これが心の代わりになるなら、きっと俺はうまくやれる。
すっ、と、なっちゃんが俺の頬に指を伸ばした。どうかしただろうか。
「大丈夫?」
なっちゃんは、そんなことを聞いた。
俺は箸をご飯につけながら、首を傾げていた。つーっと汗か何かが顔に落ちてきた。しょっぱい。
窓を見ながら食べていたから、クラスのやつらは俺の表情はわからないはず。
しかし今、向き合っているなっちゃんは俺がまだ心配に見えたのだろうか。さっきまでは、喜んでたのに。
「大、じょ、」
大丈夫だと言おうとしたら込み上がる気持ちが止まらなくなってしまった。顔を覆っていると、「どうした、おいー?」
と、少しおどけながら気遣ってくれた。
優しくて嬉しい。



