今はただ、つらくなったら皮膚を切って、怖くなったら道を走って、悲しくなったら寝る。
それで充分だったし細かいことを考える余裕もない。
俺は知った。
心が痛いとき、自傷を深くすると、反動で他人にちゃんと優しくなれること。
今はこのくらいの痛みでもないと、なくなった心を探して迷ってしまうから。
昼休みは、なっちゃんと教室で弁当を食べていた。
「最近なんか元気になってきたよな」
と、彼は俺を安心したように見た。
「わかる? いいことがあってさ」
身体を傷つけていたから俺はあまり態度に出すことがなかったらしい。
「昨日とか、なんかすごい辛そうだったから、見てられなかったけど、もう平気だな」
「あの、さ。俺……」
なっちゃんが、好きだと言ってくれたことを、思い出した。
「あぁ。いい、いいって。幸せなら。今まで通り、こうしてるだけでも」
返事を言おうとして、遮られたので、だまってたまごやきをかじった。
(気を、遣ってくれているんだな……)
なんだか嬉しい。



