ノート





ハァ、ハァッ、
荒い息が聞こえて目をさました。自分のものだ。こんな呼吸では到底眠れないだろう。

 血が少しだけ気分を沈めてくれて一時的に落ち着いたから眠れたけれど、本当に一時的だったらしくてすぐに効果は切れるし、突然、動悸と不安感が襲いかかってきた。

落ち着くためにと、携帯を開いたら姉からメールが来ていた。

「父さんが、『お前の小説ドラマ化おめでとう』だって」

……は?
まって意味がわからない。携帯を落としそうになった。

沢山の情報が一気に来た。まずは、姉と父が俺をカンベだと思ってること。それに、ドラマ化? 知らない。なにそれ。
そして逃げたはずの父が、ぱっと現れたかと思えば姉と交流してる?
 とりあえず寝てしまおう。そんで夢の中で遊園地かなんかに行くんだ。
そうしよう。

……目を閉じても、周囲の物音がやけに耳につくだけで、いつもの自分の部屋のはずなのに無機質な知らない空間に感じてきて、俺は叫んだ。しばらく叫んだ。
少し叫んだだけでも、だいぶん落ち着いた。

冷静に考えてみる。
ノートは……今のままでは、もう使えない。母さんが、ドアをノックしてきた。

「夜中にうるさいわよ。なに騒いでんの」

起こされたからだろう。不機嫌そうだ。

「ごめん、なんでもない」
慌てて謝ると、眠たそうに自分の部屋に帰っていった。
 なっちゃんに連絡するわけにもいかないから、俺はひたすらに、河辺のアドレス(ポストに入ってた)にメールを送りつけた。
 河辺は夜中でも起きていることが多いから、すぐに返事が来た。
意外と、嘘みたいな優しい言葉で励ましてくれる。いまさら言うことではないけど、
今欲しいのは、言葉だけなのかもしれない。たぶん、河辺じゃなくても誰でも。

 結局筋肉痛になるまで腹筋をしていたら眠れた。