ノート




「お前河辺と付き合ってるのか」

なっちゃんが言った。
俺はビクッと肩を動かしてしまう。
「な、ななななな」

なんですと。

「わかるよ。あいつの目、そういう目だった」

なっちゃんはさらっとこういうことを言う。

「目で、わかるの?」

「俺もそうだから、かな」
んん?

「そうって……」

ひとまず布団を畳む。
近くにあるテーブルに、なっちゃんがミルクティを持ってきて、置いたので、カップをひとつ手にして、中身を飲む。甘くてまろやかな味と仄かな苦味が口のなかに広がっていく。いいにおいがして、落ち着く。

「恋、しているの?」

なっちゃんの好きな人か……
なんだかモヤモヤする。
「お前が好きだ」

俺を抱き締めたまま、なっちゃんが言ったから。時間が、止まったかと思った。

「は。……え?」

「隣のクラスに俺をおいて乗り込んだのも、それと関係があるんだろう」

バクバクと心臓が痛いほど暴れる。収まれ、心臓。
 俺は少しの間(帰宅中とか、構えないとき)育成しているイキモノの時間を止めていたから、育成の心配はないのに「あ、あぁ、あいつに飯、やるんだった」と慌ててポケットから出したそれの電源を入れた。

 両思い、 ではない。
俺がいま、河辺を身勝手に突き放すわけにはいかないし、なっちゃんといられる程に、そう、嬉しい、や楽しい、を一緒に分かち合うほどの、心を今は持ち合わせない。
 今はそれくらい、何をしても傷ついてしまうのだ。笑えもしないのに、付き合おうなんて、確実に不幸にさせるし二股にする気もない。
俺はまた泣き出していた。はらりと涙が溢れてくる。