ノート


「……はっ」

なぜ倒れてしまえないのだ。
なぜここで、意識を失えないんだ。

つーか知らない芸能人のイメージが、俺の嫌な記憶によって作られようがどうでもいい。

勝手に使う河辺が悪い。
そうだろ?


「お、おい、大丈夫か秋弥」
なっちゃんの声だ。
わからない。
なんにも見えない。
何かが、崩れる音がした。

「お前、こいつに何の話をしたんだ?」

なっちゃん、が、河辺に問い詰める。
それは聞いて欲しいようでいてやめてくれと思ってしまうような、拷問。
明るく楽しいやつでいたい。
こいつの前では、いつまでも。
意識をなくしそうでなくならない、感覚に、
気が遠くなりながらも俺は、どうにかなっちゃんのその腕を掴んだ。

「秋弥?」

首を横に振ったのは、俺が助かりたくないからじゃない。
知ってほしくないのだ。
「すずしろ、なにも、聞かないで……」

「わかった」

なっちゃんは、あまり納得してなさそうだがうなずいた。
河辺の態度は、まるで俺ならば辛い思いをしてもいいと言われているようだった。

でも、そうかもしれないと思ってしまった。大金を稼ぎ沢山の支持をされる女優と比べれば、自分はとてつもなくちっぽけな存在。
俺と 嗄倉羅子、死ぬならどっちかと聞かれたら、ほとんどのやつが俺を選ぶ気がした。