転がるように避けると、また蹴られそうになり、足を上げているうちに、慌てて背後に回る。
「な、なんだあれ……」
部員の誰かが言ってて、なっちゃんも「じゃれてるんじゃないかな?」と笑いを噛み締めながら言った。
「これは、部活動です! ぶ、か、つ!」
河辺は、むっとしたように、俺の身体をどんと押した。
「そんなこと無いだろ、俺に行き先も告げなかった。わざわざ探したんだぞ」
「まぁまぁ、一緒に遊んでいこうぜ」
よろけた俺が言うが、耳に入っていないみたいだ。
ただ、それ以上機嫌が悪くなることはない。
なぜならあいつには『武器』があったのだ。
最低な武器が。
「『祭があった日に、海に来たことがある』んだよな」
河辺が言った言葉は、俺のトラウマをなぞることば。
笑顔で、それを放った。
「それは」
誰にも見せてなくて、筆者が俺だと誰にもいっていないノートのものだった。
俺の脳裏に沢山のことが浮かんだ。
養育費を払いたくない父が、俺を勝手に死んだことにしていたこと。
生きている俺が邪魔で、あの手この手で妨害を試みて、親戚中に手を回したこと。
嫌な噂を、あちこちに流されたりもした。
それを海に来ていた知人が話してくれたことを、思い出したときにノートに描いたものだった。
「祭が、嫌いなの? 祭が」
笑顔で、その言葉を繰り返すから俺の表情はひきつっていく。
周りには俺が何によってこの表情なのかはわかることはない。
しかし俺はフラッシュバックによって苦しめられていた。
「祭の話は、ここではやめてくれ」



