ノート


3日くらいやすんで、やっと登校するようになった。

廊下を歩いて教室に早足で向かう。

なっちゃんとはまだ顔を合わせていない。

「なぜ、付き合うことを承諾したんだ?」

声がかかって振り向くと、まだだれもいないと思っていた教室には河辺がいた。
本心を言うはずもなく、俺は暇だったからだと答えた。

「カンベって作家知ってる?」

挑発気味に聞いた。
そしたら、やけに、嬉しそうな顔。

「俺だけど」

「あぁ、そう」

ダメージは、その程度。むしろ好きな相手には知ってもらいたいとさえ思っているのかもしれない。
「もう、熱は下がったのか」
なるべく顔を見ないよう目を伏せながら、「平気ー」と答えた。

「平気そうに見えない」

うるせえ。こいつと居ると、どうしようもないくらい嫌な気持ちが沸き上がって、それを悟られないためにドキドキする。
1限の授業が終わったくらいに、目の前に歩いて来たなっちゃんを見て、いつのまに来てたんだという気になった。
普段俺より後ろの席に座る彼は見えなかったんだろう。

「なっちゃん」

俺がガシッと腕をつかむと若干引いたようになんか用、と聞いてきた。

「進路相談室行くんだけど」

「相談に?」

「いや、センセに呼ばれてんだよ」

途中までで良いからついてきていいかと聞くと、犬かてめーはと言われた。
「あ、ひでぇ。
俺も熱計りに行くんだよ、養護教諭に報告しなきゃならん」

「あの美人先生か、いこうかな」

「お前は相談室行け」

「ああっ、熱が出てきたっ」

ふざけたなっちゃんが、俺に寄りかかってくる。シトラスみたいなにおいの洗髪料かなんかがふわっと香って、ドキーンと心臓が早鐘を打つ。
不意打ちは、不意打ちはだめだって……
あわわ、と狼狽えているとなっちゃんが吹き出した。

「なに、なにその挙動不審」


にやーっと笑われ、俺は焦った。

「いやー、これはぁー、その……」

視線をさ迷わせる。
胸が苦しくなった気がする。