「お前がよくいる、
なっちゃん、は?」
とげのある言い方で聞かれる。
知っているのだろう。
俺がなっちゃんを大事に想うことくらい。
トラウマから、交遊関係まで、あとをつけてノートを読めば少しはわかる。
舌打ちしたくなった。
河辺は苦笑いで付け足す。
「妬いているんだよ、ちょっとあの男に」
「クラスメイトと仲良く話すくらい良いだろ」
「悪いとかいう話はしてないけど、ね」
そうだった。
でも、あんな圧のある言い方しなくていいと思うというくらいに、彼の言葉にはとげがあり、圧がかかっていた。
「教室で別れたよ。まさかお前と話すとこ、見られたくないし」
歩いている間しばらく、どうしようかと俺は悩んで黙ったままだった。
お前、ネット小説書いてんの?
と、そのまま聞いていいのかといざとなるとためらうのだ。
それに、証拠はなく、ただこいつがノートを読んでいるらしいという疑惑があるくらいで聞いていいものなのか。
だけど疑わしいのはこいつだ。
なっちゃんと離れてから携帯で著者名に検索をかけたらすぐ見つかった作品の内容は、明らかに俺のトラウマから何からをなぞって付け足したようなもので、あの一部分だけじゃなかったことをすでに確信している。
恐怖と憎悪と嫌悪が一気にやってきたが、家族にもクラスの誰にもそんな話は言っていないし俺が始めたノートの、どこまでがトラウマかなど聞くものは普通現れない。現れようもなかったはずだ。
説明すれば、それを知らなかった相手からの質問攻めにより、余計に傷を負うことも、吐き出したものを背負い直すことになることもわかった。
「さっきから、黙ったままだね」
河辺が、困ったように笑って言った。
頭が、ぼーっとした。屋上から飛び降りても今なら怖くないかもしれないと思う。
心は完全に逝ってしまっている。



