でも、それよりもあいつは、俺を的確に苛立たせるのが上手過ぎる。
好きだと言われるほどに、殺してやりたいとさえ思いそうな自分が、恐ろしかったからか、これはそんな考えへの忠告だという気がして甘んじて受けた。
あの痛みがなければ、形がなくなるまで殴り付けたかもしれない。
「でも、あんなこと、よかっただろうか……」
数分前。
つきまとわないでくれないか、と言ったら、付き合ってくれないかと言われたから頷いてしまった。これ以上俺への犯罪に走られるよりはマシだし近くに居れば、有益なこともあるかもしれないと思える。
心の支えを乱された人間とは恐ろしいもので、もうあいつや周りのやつに対して怖いものなどほとんどないような気持ちになっていて、それが怖かったから、部屋に来るくらいで動じる気持ちもなぜかあいつにわかなかった。
その夜からは、俺は必死に、まだ人間でいられますようにと願った。
うっかり手を染めそうな自分。それほどまでに些細なことが崩壊させた心。人間でいられなくなるかもしれなくてそれが怖い。
俺を純粋に好いていたり楽しみにするようなやつのそばに居ても、欠けた心は戻りはしないが、彼と付き合えば、いいことしかない。心の支えをなくした俺のサンドバッグになるだろうし、嫌いになれば、ストーカーとして警察に渡せる。
復讐も心の回復も出来るとなれば断る理由はない。



