そして、退院の日。
「気をつけてお帰りください」
担当の看護師さんたちに見送られて
迎えにきてくれた律くんと共にエレベーターに乗り込む。
「ありがとうございました」
そうお礼を言うと、静かにエレベーターの扉が閉まった。
あっという間に1階に着き、清算のために窓口に向かう。
「麗っ」
パタパタという足音と共にそう呼びかけたのは
「お母さん?」
そう、この病院で看護師をしているわたしの実の母親。
「すぐ戻らなきゃだからこれだけ」
そう押し付けて、わたしの返事も聞かずにパタパタと音を立てて戻っていく。
押し付けられたそれをみてみれば、
入院費等と書かれた封筒と手紙。
「ありがとう、お母さん、お父さん」
先程お母さんが走って行った方をまたそう呟けば、
律くんはそっと頭を撫でてくれる。
会計を済ませて外に出ると、
誠也くんと執事さんが立っていた。
「麗さん、お久しぶりですね」
「お久しぶりです!」
車に乗り込めば静かに発車して、思い出話に花が咲く。
執事さんの優しい運転でこれから向かう先は翼の倉庫。
誠也くんや執事さんは嬉しそうにこれまでのことを話してくれた。



