『さて、邪魔者が消えたところで』

冷蝶があとは任せたわよ、麗と微笑んだ。

作戦は、いくつか用意されていて、
確かに実行する可能性は低いけれど
冷蝶ではなくわたしが戦うという案もあった。

戦うと言っても、それは相手が拘束されていて身動きが取れない場合だった。



もしかして……まる投げされた…??



『あなたなら大丈夫』
冷蝶はそう微笑んでくれた気がした。


わたしなら、大丈夫。
きっと、大丈夫。


「何が望み?」
まだ動けずにいる2人にもう一度問う。


「わたしが死ねば満足?

わたしが消えれば満足?

それならそんな卑怯な手を使わずに

わたしを殺してごらんなさいよ」


…あれ?
わたしは何を口走っているのだろう……
喧嘩なんてできないのに………



目の前の2人を睨みつけながら距離を詰め寄っているとある異変に気づいた。


後ろから翼の幹部たちの気配が消えた…?

『ごめん完全に気抜けてた』
冷蝶が戻ってきて、再び蝶の刺青が疼いた。



『わたしを殺すのは自由にしてくれていいけど

麗の大切な人をこれ以上傷つけるのは許さない』


そう宣言した冷蝶はわたしの体を乗っ取って
元施設長と咲良さんの鳩尾にそれぞれ蹴りを入れた。


その動きはまさに華麗で、
空に舞う蝶のようで、

初めて人間に直接手を下してしまった…
なんて言ってる冷蝶からは想像がつかないほど

感情のカケラもないほどに、
心が凍てついていた。