5,くるりんぱ

翌日。教室には高橋君の姿があった。

(よかった…元気そう)

そうだ、今日は頑張るって決めてたんだ。

「お、おはよ…!」
「おっ、羽柴さん。」
「具合大丈夫?」
「あー全然大丈夫だよ!なんか佐藤から聞いたよ。お大事にって。ありがとな。」

やっば、高橋君からありがとうなんて言われちゃった!!

久しぶりの高橋君眩しすぎる…。

「くっ…。」



「大丈夫?胸痛いの?」

「へ?あ、、なんでもないよ!!」

やばい制御できない。悶えてるのが、思わず動作に出でいたみたいだ。

さすがに身が持たないので、話を終え席につく。

「羽柴さんおはよ。」
「あ、佐藤君。おはよう。」
「で、どうだった??」
「なんのこと?」
「昨日、奏太ん家結局行ったの?ってこと」
「部活忙しくて、行けなかったの。わざわざありがとうね。」
「あーそうだったんだ!あれ、羽柴さんって吹部だっけ?」
「うん、そうだよ?」
「へぇー楽器も弾けちゃうのかすごいな。」
「大したことないよ笑そういえば佐藤君って何部なんだっけ?私知らなくて。」
「僕?演劇部だよー」
「演劇部って何してるの??なんか漫画とかの世界だと思ってた。」
「よく言われる笑」

あれ、なんか佐藤君話しやすいな。
会話がトントン拍子に続いていく。

「佐藤君って話やすいね笑」
「そう?ならよかった。」

良い人そうだ。案外みんな良い人なのかも知れない。

「色々相談してくれてもいいんだよ?」
「相談?」
「ほら、奏太のこととか!」
「しっー静かに!!な、何言ってるの?!」
「奏太のこと知りたいくせに。」

高橋君のこととなると佐藤君は図々しくなる。

(なんか、からかわれてるみたい…。)

けど、佐藤君の攻撃はあながち間違っていない。

「どうか、色々教えてください!!」
「僕にまかせろっ!」

この際、乗っかれるものには乗っちゃおう!

「で、そのー高橋君って何部ですか?」
「え。知らないの?サッカー部だよ??」
「なにそれ、かっこよすぎる!!瀕死…。」
「ちょ、羽柴さん面白すぎ笑」
「え…高橋君のサッカーやってるとこ見てみたいな。」
「今度言っとこうか?」

佐藤君の満面の笑みになんだか嫌な予感がしたので、それについては前言撤回することにした。

それから私は、定期的に佐藤君から高橋君の話を聞くようになった。

佐藤君と高橋君は小学生の頃からの幼馴染だということ。
O型、10月20日生まれのてんびん座。
好きな食べ物はハムカツサンド。
家がお金持ちだということ。
小さい頃の夢はウルトラマン。
将来の夢はお医者さんだということ。



不思議なことに、知る度にどんどん好きになる。
私の知らない高橋君を知ってる佐藤君が羨ましい。

「佐藤く~ん!!」
「はいはいどうしましたか?今度なんですか??」
「高橋君不足!どうしたらもっと、高橋くんと接近できる?」
「えー僕に言われてもなあー。」
「佐藤君!」
「うそうそ。考えますよ!」
「感謝…。いや、なんか本当に接点ないなあと思いまして。なんのイベントもないし…。日常生活の中だけでは限界があるいうか。」
「イベント…。あ!!7月に球技大会あるじゃん!!」
「え、そういう学校行事のこと??」
「イベント、だよ?」

6月ももう終わる頃。
梅雨もそろそろあけそうだ。

「でもでも。球技大会でどうやってお近づきになればいいの?!」
「それは…。僕も分かんない。」

球技大会…。なんて忌々しい。

運動音痴勢からしたら地獄でしかない。

いかに息を潜め、できる子の足を引っ張らないか。
それだけを考えて過ごす。

それが使命なのだ。

球技系の部活至上主義の行事でしかない…。


「あ!高橋君サッカー部じゃん!!」

自宅で私は、すごいことに気づいたのだ。

高橋君のサッカーしているところを合法的に応援ができるということに!

「うちわでもつくちゃおうかな…。」