次の日、午前9時30分。
待ち合わせ場所のブライダルベールの花壇の前で、わたしは一輪のダイヤモンドリリーを手に、宏樹さんを待っていた。

「お待たせ」
9時55分過ぎに駅から出てきた宏樹さんは寝不足なのか目の下にひどいクマができていた。

だけど、それを支えるのはわたしじゃないんだ。
「ちゃんと寝てくださいよ〜」
わたしが言えることはそれしかなかった。

バイト先に綺麗なお花が入荷されたからプレゼントしたかった、なんて嘘を重ねて、花束を無理やり手渡した。

「…ごめんなさい」
そう呟いて、宏樹さんに背を向けて歩き始めた。
宏樹さんが何か言った気がしたけど、わたしは構わずにその場から去った。

今戻ると、決心が揺らぎそうで、怖かったから。



午前11時、待ち合わせ場所にれいなちゃんは来なかった。メッセージアプリを開けば、昨日送ったメッセージは未読のままで、1時間ほど待ってみたけれど、会えそうにもなくて昨日のメッセージたちは送信取り消しボタンを押した。




「三園さん、今までたくさんお世話になりました」
「かほちゃんが決めたことなら仕方ないわ… また何かあったらいつでも頼ってね」

一身上の都合で、とお花屋さんでのバイトを辞め、アパートを変えた。

流石に大学は変えられないけど…
でもこれでいいんだ。

たった1ヶ月だったけど、
すごく楽しかったな。

「きみが、すきだったよ」
もう伝わることのないこの想いは
永遠に、封印して。





いつか、また会える日まで、

私は君の幸せを願うよ。



fin. **


















……………………

ピンポーン
中から出てきた女の人に紙袋を差し出して挨拶をする。

「はじめまして、今日から隣に引っ越してきた花島香穂と申します」

「わぁ、わざわざありがとうございます!
はじめまして、わたなべひろな です!」



to be continued………⁈