れいな、ちゃん…?
「…そっか
まあ、ちぇりも騙せたしわたしは満足よ」
れいなちゃんはそう吐き捨てて立ち上がり、
わたしの方に向かって歩いてきた。
「言っとくけどね、ひろきはわたしのなの。
あんまり調子に乗らないでね?」
すれ違いざま、そうにっこり笑いかけて、お店を出て行った。
呆然と座る年下彼氏くんは頼んだドリンクを飲み干して、颯爽と出て行った。
いつの間にか戻ってきていた宏樹さんはバツが悪そうにひとつ咳払いして、沈黙が広がった。
今起こった全てが受け入れきれずに、わたしはその場にいられなくなってお手洗いに駆け込んだ。
気が付かなかったけど、私も腰が重いかも…
そう思ってスマホのアプリを開けば、「生理予定日です」という通知が来ていた。
「はぁ、最悪…」
そうこぼして、鏡の前で笑顔を作って席に戻る。
「注意することはさっき言った通りです。
あたたかいものを妹さんに作ってあげてください」
お店を出て、駅までの道のり、友達に勉強を教えるかのようなノリで話をする。
自分の女の子の日を自覚してから気分は最悪で、本当なら今すぐにでも横になって寝たい。
わたしは女の子の日の何日か前から貧血がひどくなって、気分が酷く落ち込んむタイプ。2日目が特に酷くて、起き上がるのがやっとなくらい。
いつもはお薬のおかげでなんとかなっているんだけど、自分のことを忘れていたから服用する薬がない。
駅のホームで電車を待っている間、何度か倒れそうになった。
「心配だから家まで送るよ」
隣に座った彼は優しく手を握ってくれた。
「そうやって弱ってる女の子にあんまり優しくしちゃだめですよ…」
嬉しいくせに、さっきのなんとも言えない表情を見てからどうも素直になれずに、だけど限界が来て身体を宏樹さんに預けた。
最寄駅に着くまでの間、優しく頭を撫でてくれたその手の温もりはきっと、忘れないだろう。



