「そういえばこれ、妹さんに」
「本当にありがとう…!助かる」
そう言って紙袋を手渡せば宏樹さんはニコッと笑って嬉しそうにしてくれる。
「いくらだった?」
財布を取り出してそう尋ねてくれたけど、わたしのお節介で不必要なものまで入っているから払わせるわけにはいかない。わたしだってバイトしてるし、ね。
「あ、いつもお世話になってるお礼だと思ってほしいです」
これから毎月続くものだし、と続ければ大人しく引き下がってくれた。
「お待たせいたしました」
店員さんがサンドイッチセットを持ってきてくれたと同時に、
カランカラン♪
と軽快にドアベルが鳴った。
ちょうど空席だった隣の席に座ったのは
「「え、」」
ちぇりの年下彼氏くんと、先程宏樹さんと話をしていた女性。
宏樹さんとわたしの間抜けな声が重なる。
ちぇりの年下彼氏くんは笑顔だけどここから見る限り目に光が入っていなくて、
「………」
宏樹さんはちぇりの年下彼氏くんの前に座った彼女を見つめて何も言わずに、眉間に皺を寄せて唇を噛み締めている。
あの時から親しそうにしていた2人、
ねぇ、宏樹さんは今、何を思っている?
気まずい空気の中、宏樹さんが席を外すといやでも聞こえてくる隣の席の声。動揺が隠しきれずに声は聞こえてくるけれど、それが意味を持つ言葉としては伝わらない。
「もうやめましょ、れいなさん」
ちぇりの年下彼氏くんが言ったそれだけがはっきり、聞き取れた。



