ちぇりとれいなちゃんとカフェで別れ、講義に向かう。
それからまた、いつもの日常が戻ってきて、気がつけば週末に。
いつもの、なんて言ったけど月曜のお昼、ちぇりとれいなちゃんと別れてから、変わったことがある。
火曜に大学ですれ違ったとき、ちぇりはよそよそしくなっていた。目が合うと勢いよく逸らされた、気がする。だけどおはようって言うと、いつもの笑顔でおはようと返してくれた。
………きっと、気のせいだよね…?
れいなちゃんには会っていなかったけれど、ちょうど今日のお昼、2人でランチをした。お弁当を持って1人で食堂に行くとれいなちゃんが偶然隣に座ってきた。
楽しそうに仲直りしたんだ〜なんて言って、彼氏さんとのお話をしてくれた。
宏樹さんとは相変わらずで、おはようとおやすみを除けば、1日に2往復ほどメッセージアプリでやりとりをするくらいで、主に日常の話。今日は何を食べた〜だとか、妹さんの話も多いかな。
遊びに行く約束どころか、水族館に行った日から、会ってすらいない。
だけど垣間見える気遣いたっぷりなメッセージひとつひとつに、わたしの胸は大きく高鳴っていた。
金曜の夜、バイトが終わり、夕食と家事を済ませ、お風呂に入ろうか迷いながらYouTubeを見ていると、
【よかったらさ、電話しない?】
宏樹さんからの突然の連絡。
「ふぇ、、」
1人の空間になんとも間抜けな声が響く。
宏樹さんの声は聞きたい…
だけどわたしが電話越しに声を届けるのは…少し恥ずかしいな…
でも、宏樹さんと電話、したいな…
トークを開いて何を送ろうか迷っていると、
リーンリン♪
画面の左上に【渡邉 宏樹】という名前の表示が現れて、着信画面に切り替わった。
慌てて緑色の、受話器が取られたマークを押すと
「もしもし、急にごめんね?」
「あ、いえ、大丈夫です」
耳元に、優しい声が広がった。
「ちょっと相談したいことがあって…」
突然声色が変わり、そう切り出した。
「はい、なんでしょう?」
「俺さ、妹いるって言ったじゃん…?」
「そうですね、確かにおっしゃってました」
「妹がさ………」
「…?妹さんが?」
「なんていうんだろ、あの、」
「あ、もしかして女の子の日ですか?」
宏樹さんの言葉を待つが、なんとなく話しにくそうな感じがして、直球で聞いてしまった。
「いや、違う…あれ、違くないのか?」
「もしかしていつもより不機嫌、とか?」
「なんでわかったの?!?!」
「あはは、なんとなくですよ笑」
宏樹さんの妹さんが中学1年生だということは、メッセージを通して知った。
先程のガチガチに緊張した声とは打って変わり、ほっとした声につい笑い声が漏れる。



