【短編】また会える日まで、君の幸せを願う



歩き慣れたアパートまでの道のり、

いつもと少し違うのは、
隣に宏樹さんがいること。

「夕方って意外と危ないから家まで送ってくよ」
その言葉に甘えて彼の隣を歩いてる。

アパートの近くに誰かいると心配だから、と玄関の前まで送ってくれた。


「今日はありがとうございました、楽しかったです!」
「俺も楽しかった!こちらこそありがとう。
あー帰りたくないなぁ…」

私も、少しでも長く一緒にいたかったけれど、でも彼には、

「お家で妹さんが待ってるんですよね?」
「うん、帰らなきゃだわ笑 また遊ぼうね」
「はい!お気をつけて!」

わたしが戸を閉めて、鍵をかける音までを確認してから、足音が遠ざかった。


さっそく水族館で購入したクラゲを袋から出して、ベッドの横の白いスミレの一輪挿しの横に置く。
このスミレは造花。


【上京して環境が変わっても謙虚さを忘れずに、小さな幸せを見つけられますように】
そんな願いを込めて飾っている。

お気に入りの、花。


夜ご飯を食べ、お風呂も家事も済ませて
明日の大学の用意を終わらせて、
ベッドに潜る。

「今日からよろしくね、クラゲさん」

可愛いお顔のその子に話しかけて、
落ちてくる瞼と同時に目の前に広がる暗闇に身を委ねて眠りについた。