レストランでの食事を終え、また館内を回る。
「わぁ〜!!すごい!」
「ふはっ」
「も〜、笑わないでくださいよ!」
地元の水族館にはない、たくさんの種類のお魚が気持ちよく泳いでいる大きな水槽を見上げて感動していると、宏樹さんに笑われる。
「かほちゃんって見てて楽しいよね、
ちっちゃい子みたいで」
んん、そんなに子供っぽいかな…
大学の友達もみんな口を揃えて「かほは放っておけない子供っぽさがある!」っていうくらいだし、
そりゃ確かに、自分は幼いなってみんなと一緒にいると、いつも、思う…
自覚がないわけじゃない、
でももうすぐ20歳になるしおしゃれを頑張って、少しでも大人になれるように、頑張ってるのに、
なんか、なんだろう、、泣きそう…
「なーに泣きそうな顔してんの、
純粋でかわいいってことだよ?」
俯いて涙を堪えていると、
宏樹さんの大きな手が頭に乗っかる。
「ほら、上見てみな?」
その声に見上げると頭上を5羽のペンギンが飛ぶように泳いでいる。
「わ〜!ペンギンさん!」
泣きそうになってたことも忘れてその子たちを目で追いかける。
「ふはっ、やっぱかぁいいね」
そんなわたしの姿に、宏樹さんは満足そうに笑った。
また子供扱いされていそうなことは、知らんぷり。だって、こんなの見たことないんだもん!
特に解散の時間は決めていないけど、朝から歩き回って疲れてるでしょ?と宏樹さんが気遣ってくれて、最後にお土産屋さんに寄ってから帰ることに。
できる男は違う。
お土産屋さんでクラゲのぬいぐるみを購入した。
「ふはっ、やっぱ買うんだ笑」
「このクラゲさんがわたしのことを呼んでたので!
それから、こっちは宏樹さんにお礼です。
妹さんと食べてください」
「そんなの良かったのに笑
でもありがとう」
水族館名物のお魚クッキーを手渡すとにこにこ笑って、受け取ってくれた。
出口のゲートを抜ける時、
「今度は…………から」
前を歩く宏樹さんは何か呟いた。
「ん、何か言いましたか?」
「なんでもなーい!ほら、帰ろ?」
聞き返すとはぐらかれて、当たり前のように手を差し出される。
やっぱり慣れないその手を遠慮がちに握って歩き出す。
歩幅を合わせて隣を歩いてくれる宏樹さんはきっと、
わたしのことを妹さんと同じような感じで見ているのだろうな、
そう思うと少し、ほんの少しだけ、もやもやした。
友達たちから子供扱いされるもやもやとは別の、
これまでに感じたことのない、すっきりしない、何かと、
朝感じたモヤモヤとが重なった。
日に照らされた2人のシルエットが重なり、
きっとこれが恋だと、思った。



