【短編】空に翔ける恋



「言っとくけど私緑沙の妹だから」
ニコッと白い歯を見せ笑う沙知。


周りの女の子たちが静かになったのはその声がその子たちにも聞こえたから。


「あ〜!そういえば同姓じゃん!!」
思い出したようにわたしがそう言うと
沙知は呆れたようにわたしの頭を1つ頭を叩く。


「ちょっとそこの子たち!
今からタイム測定再開するんだけど2人ほど手伝ってくれない?スタートの旗とタイム記録やってほしいんだけど」
マネージャーさんが慌てて駆け寄ってきて、
野次馬に来た女の子たちはなんのことやらと顔を見合わせる。


「「はいっ!」」
お互い顔を見合わせたわけでもないが
わたしと沙知の声が揃う。

「じゃああなたはタイム記録、あなたは旗よろしくね」
そう言われ、わたしは記録係、沙知は旗係になった。


「急に手伝わせちゃってごめんね笑」
実里(ミノリ)と名乗ったその先輩は、ゴール地点に向かいながらわたしに笑いかける。



無事に全員のタイムを図り終え、
「2人ともすごくうまかったんだけど、
陸上経験者??」
目を輝かせながら話しかける。

「私はお兄ちゃんの練習相手に付き合わされたので!」
と沙知が満面の笑みで答える。

「いえ、わたしは…特に何も…」
と弱々しく呟くと

「かーのん!沙知さん!」
「花音ちゃん!沙知!」
ミーティングを終えたみーたんと緑沙先輩の2人が駆け寄ってくる。


「今日もありがとな実里」
みーたんがそう言い、実里先輩の手からさり気なく今使っていたタイマーや旗、バインダーなどが入ったカゴを自分の方へ持っていく。

(そういうところがモテるんだよ、みーたん…)
出かけた言葉を飲み込んで、先輩方の後ろに並んで部室についていく。