この栄高校には、私の出身中学から上位2割ほどの生徒達が進学する。

1-Aと書かれた教室を見つけ中に足を踏み入れるともう既に15、6人ほど人がいた。

黒板に座席表が貼られている。

(うわ、1番前じゃん…)
廊下側から2番目の1番前の席。

なんかやだなぁ、、と思いながら席につく。

友達や知り合いがいるわけでもないので、1人でぼ〜っとしていると
「ねえ、あなた1人?」
と後ろに座っていた女の子に声をかけられた。


彼女は笹島 沙知(ササジマ サチ)というらしい。

ポニーテールにまとめられた栗色の髪に少し焦げた肌。
ニコッと笑うとエクボができて、白い歯が光る。

中学の頃は水泳部に所属していたらしい。
高校ではマネージャーしてみたいの!と目を輝かせていた。


そんな希望に満ち溢れた彼女を見ていると
わたしも新しいことを始めてみたくなった。


ピコン!とカバンの中から音が鳴る。
危ない危ない、携帯の電源を切り忘れていた。

放課後までは携帯の使用は認められておらず、見つかってしまったら始末書を書かなければならない。

慌てて電源を切ろうと電源ボタンを長押しすると画面にはみーたんからの通知が目に入る。


【今日の放課後、陸上部の見学】
【待ってるから】


静かに電源を落として沙知との会話に戻った。