中学の頃を思い出していると
突然おでこに柔らかいものがぶつかった。

「かーのん?」

いや、電柱に頭をぶつけそうになったのをみーたんが手をクッションにしてくれたんだ。

「さっきから何回も呼んでたのに。
もしかして俺のことでも考えてた?」

なんてニヤニヤして意地悪な質問をするみーたん。


お母さんがみーたんに一緒に登校するよう頼んでいたみたい。

みーたんも断ればよかったものを、
当たり前のように引き受けてくれて、今隣にいる。


「みーたんのことだよ」なんて言えるわけもなく

はぁ、と1つため息をついて
「高校のこと」
と言って歩き出す。


「ため息ついたら幸せ逃げてくよ〜?」
そう言いながらわたしの元へ駆け寄るみーたん。

これはみーたんの口癖。
中学の時からわたしがため息をつくとそう言ってくるようになった。

「逃げてくような幸せなんて元々ないよ」
そんな可愛げのない言葉はぐっと飲み込んで、

「うん、そうだね」
無難に、そう返しておいた。


他愛のない話をしているとあっという間に学校に着く。

下駄箱の場所が少し離れているので、
校内に入る扉のところでみーたんと別れる。


「今の人かっこいいなぁ、、」
なんて同級生らしき女の子達が話している。

高校では目をつけられませんように。
そう願って教室へ向かった。