【短編】空に翔ける恋



私このまま死ぬんだろうな…
だけど死ねばここから解放されるんだろうな…

なんて呑気に考えられるくらいには、
頭は冷静で、

胸だけがはち切れそうなくらい苦しい。


もう死んでしまいたい。


窓から広がる景色に、思わず身を乗り出した。

「ここから飛び降りれば、きっと楽になれる…」
そう呟き、最後にひとつ、深呼吸した。


これから死ぬと言うのに頭は至って冷静で、
いつの間にか呼吸が苦しくなくなっていた。



「花音っ!!!!!!」

ちょうど、身を投げ出そうと足を地面から浮かせたときに、

誰かに呼び止められた。



いや、正確にはこの声の持ち主によって、
身体が窓から引き離された。


「みー、、たん…」

「花音…よかった…」

両目に涙を浮かべてわたしを抱きしめるみーたんに

「ごめんなさい…」
と呟くことしかできなかった。



「花音、お願いだから死なないでくれ…
俺が守るから、支えるから、だから死ぬな…

好きなんだよ、花音が誰よりも好きなんだよ!!」

みーたんはそう言ってわたしをもう一度、今度は強く抱きしめた。



「みー、たん?苦しい、よ?」
ぎゅっと強く抱きしめられ、苦しくなってきたので胸をトントン叩きながらそう言うと、

「やっと笑ってくれた」
と安心したようにわたしから離れるみーたん。

「みんな、心配してるから」

そんなみーたんの言葉に何も返せない。
しばらくお互い沈黙になる。



みんな、というのは沙知や柏木くん、緑沙先輩のことだろう。

病院で見せてくれた3人の安堵の顔と、

「彼らを信じて、頼ってみてもいいんじゃないか?」という両親の言葉を思い出した。

……わたしは、どうしたい?



「あ、、さっきの忘れてくれていいから。
放課後走ろうな?」

沈黙に耐えきれなくなったみーたんがそう言ってわたしの手を引いて廊下に出ようとする。