そんなの無理だよ………
だって………
「今日の放課後グラウンドでタイム測定するから。
言っとくけど木原の拒否権はないからね」
ニヤニヤ悪い笑みを浮かべながら柏木くんは鼻の下を掻く。
「はぁ、、わかったよ」
仕方ない。
走るだけ。どうせタイムなんか基準に届くわけないんだし。
タイムに届かなければ、流石に2人も諦めてくれるだろう。
「っしゃー!」
「いぇーい!」
わたしの返事を聞き、ハイタッチしている沙知と柏木くんはやっぱりかわいいしかっこいい。
目の保養だ〜なんて思ってたのに
\\キャーッ!!//
廊下の方で黄色い歓声が湧き上がる。
「かーのんちゃんっ!」
教室の外から私を呼ぶ緑沙先輩の声が聞こえる。
「笹島先輩…!!!!」
「結城先輩まで…!」
「なんであいつなんかに」
わたしより先に周りにいる女の子達が反応する。
ヒソヒソと、だけどわたしにも聞こえるようにはっきりと口にされる。
気にしない、気にしないと思ってはいるけど
あることないこと言われたわたしの胸はキューっと痛くなる。
呼吸が、辛くなってくる。
……忘れてた。
陸上部に行く、ということは
周りの女の子たちの目も痛い、ということで。
「っ、、」
やっぱりわたしには無理だ…
そう言おうと沙知と柏木くんの顔を見ると、
「私を、私たちを信じて」
と沙知はぎゅっとわたしの手を握った。



