【短編】空に翔ける恋



「花音、、俺のせいで、ごめんな…」
みーたんが弱々しく呟く。

「俺が無理に陸上部に誘ったから…」
本当にごめん、と頭を下げる。


「そんな、そんなことないっ!
わたしが弱いのがだめなんだから大丈夫だよ。
みーたんのせいじゃない」
頭を下げたまま動かないみーたんの頭をだいじょーぶ、だいじょーぶと言いながら撫でる。




だって…
わたしが陸上部に入らなかったのは、
それだけじゃないから___




「わたしね、過換気症候群なんだって」
「え、、かかんき、しょーこうぐん?」
「うん」

あれは、2年前のことだった___

その日はいつも通り陸上部で練習をしていた。

部活を終え帰ろうとしたとき、突然息が苦しくなった。

うまく呼吸ができなくなって、その場で倒れ込んだところを
顧問の先生が見つけ、そのまま病院へ。

そして少し検査をすると、
「過換気症候群ですね」
と言われた。

日頃のストレスが原因で起こったらしい。



部活はもちろん楽しかったが、
結果をうまく残せない焦りと
周りの目線が気になって、
部活の後、倒れ込むことが多くなった。

最初は誰にも言わず、我慢をしていたが
顧問の先生に倒れたところを目撃され
しばらくの間、部活を休むようになった。

おかげで3年生になる頃にはすっかりタイムが落ち込み、
大会には全て出場しなかった。


学校はなんとか通いきったけれど、

この病気のことはお父さん、お母さん、そして顧問の先生しか知らない。



話し終えると、みーたんはわたしの頭を撫で
「話してくれてありがとな、」
と目に涙を浮かべながら言った。

「だからわたし、陸上部には入らないよ」
そうもう一度宣言した。

「どうせ聞いてたんでしょ、沙知も緑沙先輩も柏木くんも」
廊下にはきっと3人がいる。
なんとなく、だがわかる。


ガラガラッと戸が開き、案の定3人が入ってきた。
「花音…」
両目に涙を浮かべながら、わたしの手を取るのは沙知。

「沙知、ごめんね、、」
何か言いたげな沙知に声をかける。

「本当にごめんね、みんな。
だけどわたしはもう、あんな思いしたくない」

それに、みんなにも、わたしのせいで傷ついてほしくない。