この政略結婚に、甘い蜜を

華恋がぐちゃぐちゃの感情をぶつけようと口を開いた刹那、閉まっていた扉が開き、拍手と華やかな音楽が鳴り響く。華恋は口を閉じ、バージンロードを歩かざるを得なかった。

チラリと華恋がバージンロードの左右を見れば、互いの友人が座って結婚を祝福している。華恋は一度も零に交友関係を教えたことはないのだが、LINEに友達登録されている人は全て招待されているようで、モヤモヤした気持ちがまた生まれてしまう。

神父が立つ祭壇の前で華恋は父親から離れ、零の手を取る。零は幸せそうに微笑んでいるものの、華恋は笑顔を作ることすらできなかった。

「新郎、鍵宮零さん。あなたは病める時も健やかなる時も、互いを信じ、愛し合うことを誓いますか?」

「はい、誓います」

いつの間にか静かになっていた挙式場に、零の声が響く。優しく微笑む神父はゆっくりと頷いた後、今度は華恋の方を向いた。

「新婦、花籠華恋さん。あなたは病める時も健やかなる時も、互いを信じ、愛し合うことを誓いますか?」