ある時学校帰りの彼女と会った。中学の時の卒業式以来で、その時に「おめでとう」と言い合ったのが最初の会話だったはずだ。

 小学校から知っているのに、現実はそんなものだ。こういうのは幼なじみとは言わないだろう。それでも、一回話したことがあるだけで、ずいぶん前から話したことがあるような錯覚に陥るのは小学生の頃から知っているからだろうか。


 「だいぶ変わったね、耳痛い?」穴が空いた耳を興味深そうに眺める彼女もそう思っているのだろう。

 一回しか話したことがないのに随分と親しげだ。ただの世間話のように話を進める彼女はどこか不思議で居心地が良かった。


 彼女は本来、ものすごく穏やかでにこやか、小学生から軽く知っている彼女は非行とは無縁の真面目なしっかりした優等生タイプだった。
 今も着ている制服はピシッとしわがなく、スカートの丈も膝下、一度も染めたことがないだろう黒髪はそのまま艶々としている。


 彼女とはここでの会話を最初にいつの間にか今のような関係になった。
 まるで、魚が水を求めるように、あるべき場所に帰るように、意識せずとも彼女と行動を共にし、深夜徘徊もしなくなった。どこかへ遠くへと思っていた心は彼女のところへなんて思うようになった。
 
 
 そして今度は彼女が荒れだした。何かを求めるように傍若無人に振る舞い、容赦無く暴言を吐き傷つけようとする。でもあの時の同級生のように「いいなぁ」なんて絶対に言わないし、たった数ヶ月で劇的にイメチェンしても理由も聞かずに「変わったね」と言いそれ以上は聞かない。だから一緒にいるにいるのかもしれない。