「……し……シリル……さま」

「絶対に助けます、王女殿下」 


 私は立ち上がれぬまま、彼に手を伸ばす。

 すると彼はそのまま私を片手で抱き上げた。

 泣きたいはずなのに、その腕の中では不思議な安心感があった。

 大きな剣を手に持ち敵をなぎ倒していく。

 私はその彼の胸に顔を押し付け、ただ時が過ぎるのを待つしか出来なかった。


「少し、休憩しましょう」


 シリルの声で顔を上げる。

 先ほどまで聞こえていた怒号は、いつしか消えていた。

 辺りはいつもの鬱蒼とした静かな森である。


「シリル様、あ、あなた怪我を」

「ああ、これですか。大丈夫ですよ、王女殿下」


 私を抱きかかえながらの戦闘。

 片手での不便な戦闘のせいで、彼の頬には大きな傷が出来、そこからは血が流れていた。


「なにも大丈夫ではないではないですか」

「それほど深いものではありませんよ」

「ダメです。とにかく座って」