「……うん、そうか……そうか。寂しくなるよ、わたしの愛おしい子」


 父は抱きしめ、頬へキスをしてくれた。

 父が部屋を後にすると、メイをはじめとした侍女たちが大急ぎで仕度を始めた。

 ただ一つのわがままとして、シリルより先に城を出たいと願ったからだ。

 ココで彼を見送るのは、どうしても嫌だったから。

 幸い後妻ということもあって、結婚式はない。

 そのため花嫁衣装の必要もなく、領地療養も兼ねているので最低限の荷物さえあればいいのだ。

 それでも、おそらく馬車一台分くらいの荷物になるだろう。

 メイたちには申し訳なく思いながらも、私はお世話になった方たちへの手紙を書くことにした。



 ただ最後に書こうと思ったシリルへの手紙だけは、どうしても筆が進まなかった。