部屋を訪ねてきたのは、メイではなくシリルだった。

 最近は、幼いころとは違い、部屋になど来てくれることはなかったというのに。


「ちょうど寝れなくて暇してたから、いいわ。こちらへ。今侍女を呼んで、お茶を入れさせますわ」


 部屋に置かれたソファーを勧める。


「いえ。このままで」


 そう言って、シリルは扉の前に立ち、座ろうとはしない。

 真面目だというか、融通が利かないというか。

 昔なら駄々をこねて大泣きをして、寝るまで側にいてもらうことも出来たのに。

 シリルに近づきたくて、早く大人になりたかったのに、大人になったら、ままならないことの方が多いのを知った。


「いいから座って。そんなとこに立っているなら、話など聞かないから」


 私がむくれると、シリルは観念したようにソファーへ腰かける。

 私は少し考えた後、シリルの隣へ座った。