だからなにかと口実を作っては、私の方からシリルの元へと通った。

 シリルはそんな私の気持ちなど、なにも知らないことも知っている。

 それでも、少しでも会いたくて。声を聞きたくて……。



「王女殿下は、今年18になられるのですよね」

「ええ、そうよ。私も成人となるのですよ」


 姉たちが他国へ嫁いだこともあり、私は国内の貴族と婚姻をというのが、父の希望だ。

 シリルは爵位こそ、まだ継承していないものの、国境をまもる辺境伯の長男である。

 ゆくゆくはその爵位を継ぐのだから、貴族という点では何ら問題はない。

 なんて、少し急ぎすぎかしらと思わないこともない。

 でも、それこそが私の一番の願いだ。

 そうすればもう離れることも、こんなに自分の思いに胸を締め付けられることもなくなるから。


「わたしも歳を取るはずですね」

「私と、そんなには変わらないでしょ」

「いえいえ。わたしと王女殿下では、娘と父ほどの差がありますよ」