よく見なくとも、金色のバッチには三つ巴のマーク。じっくり見ないと分からないが、三つ巴の真ん中にはSの文字。

「―ッ!わ…私の!」

何とか振り絞って出した言葉。
誤魔化せるだろうか?

深呼吸をして言葉を紡ぐ。

「取り乱してごめんなさい。私の大切な人の形見で…。中々見つからなかったから…。」

「形見かぁ。私の知ってる人?」

「詩月を逃がした後に入ってきた人だから知らない人よ。でもとても良くしてくれて。」

よかった…、気付かれてない。

「あ…部屋のポーチに大事に入れてくるわね。」

何事もない澄ました顔で玄関から部屋へと向かう。
おい!と声を掛けてきた大樹には目もくれず…。

それほどショックを受けていたのだろう。
足早に部屋へと入った。

あぁ…。

崩れ去る。
夢物語でしかないこの瞬間が…。

まるで…

"お前にはそっちの世界では暮らせない"

そう言われているようで―…。