何度見ても慣れない、この物凄く大きな別荘。
どうしても圧倒されてしまう。

そんなことお構いなしに皆は玄関へと足を運ぶ。
慣れって凄いわねと歩きながら感心してしまった。

賑やかな声。

明るく温かな部屋。

みんなの笑顔。

幸せすぎて、忘れていたんだ。
私の暗い現実を…。

「あれ?詩月、何か落ちてねぇ?」

「あ、本当だ!…ボタン?」

「あらやだ、誰かボタン取れてるんじゃないの?」

ボタンが落ちてるところに、ちょっとした人だかり。
そんな驚くようなボタンなのだろうか?

「これ三つ巴の紋章じゃない?」

ドクンと体中から嫌な音が聞こえてきた。

動悸が激しく、冷や汗も出てきた。
それを皆にバレないよう取り繕いながら、ボタンが落ちている場所へと足を運ぶ。

まさか…。

まさか…。