「キャー!お姉ちゃん、りんご飴もってるー!」

黄色い声を通り越して金色の声?

「大樹さん!花火大会の楽しさを知ってもらうために、お姉ちゃんを沢山連れ回してください!!」

その言葉を聞いて、結月は顔を引きつらせている。

無理もない。
今の詩月は、推しを輝かせるかのようなギンギンとした目をしている。

俺でさえ圧倒されてしまいそうだ。

「変わってないわねー…。」

詩月を目で追いながら、儚そうに呟いた結月。

時折遠くを見るような目をするのに気が付いたのは、この前の明け方バルコニーで見たせいなのか…。

17歳には見えねぇ大人びた雰囲気の中に、闇を醸し出すような暗い表情。

無理に聞くことはしたくない…が、何かあれば頼れる存在になりたいと思う。

「お姉ちゃん!こっち!ベビーカステラ!」

「はいはい。急かさなくても行くわよ。」

さっきの儚そうな姿はなく、笑顔で詩月の後を追う結月を目で追う。

いつか結月の闇を話してくれた時は、受け止めてやろう。

俺の全てをかけて。