「こんなに離れがたいのは、皆が温かいから―…。」
どうして、こんなに見ず知らずの私に親切丁寧に接してくれるのか。
闇雲に足を踏み入れたただの女なのに。
清宮も鬼龍も―…。
いつの間にか、私の中で大きな存在になってる。
そう思ったときすぐ浮かんでくるのは、大樹の顔。
自分の顔が赤くなるのが分かるほど、気になる存在になっているというのは明白。
私は今戸惑っている。
やらなければならないことがあるのに、現を抜かしてしまっている。
自分自身を現実に引き戻すも、また戻ってきてしまう。
「ここがあまりにも居やすくて…。」
「結月?」
!?
この声は大樹!?
「え?あ…え!?はい!」
「終わったのか?」
「ううう…うん。終わった。」
物凄く噛んでる。
恥ずかしい…。
「入るぞ?」
え!?
心の準備してないのに!?
自分らしくないくらいアタフタしてしまった。
そんなアタフタも虚しく、扉は開いた。
「ひ…大樹…。どうかな?」
恐る恐る聞くも返事がない。
あれ?
変だったのかな?
「大樹?」
「あぁ…、いいんじゃないか。」
そっぽを向きながら言う大樹は、心なしか赤くなっている。
照れてる…?
そんな姿を見てしまうと、勘違いしそうになる。
まるで―…私を好きかのように。

