「莉依、もうその辺にしてやれ。仕事も立て込んでるんだろ?」
「翔ちゃんっ!そうだけど…。」
「まだまだこいつらもガキなんだ。自分のしたことを曲げなかったり、間違うこともある。俺たちもそうだっただろう。」
あれ?
デジャヴ?
昨日大樹が言ってたことと似てるな。
「失敗しながら学んでくんだ。見守ってればいいじゃないか。な?」
まだまだ怒りが収まらない莉依さんを宥めながら、清宮の組長さんと2人で部屋を出た。
その後に続くと思っていた大和さんが、大樹のところに来て優しく声をかけた。
「まぁ、そうイライラすんなって。」
「こんなところで見苦しいところをお見せしました。」
大樹にしては珍しくツンツンした言葉ではない。
大和さんには頭が上がらないのか?
鬼龍の皆に足を崩すよう声をかけながら話をする。
「アイツは、幼い頃から辛い思いを沢山経験してきたんだ。だからこそ、そんな思いをさせないために姫野の頭として今も昔も一生懸命なんだ。それは大樹にも鬼龍の皆もそう。そして結月ちゃんにも…ね。」
「過保護過ぎんすよ、お袋は。ここは清宮の管轄だから、親父に任せればいいのに、何でもかんでも首を突っ込んで。」
「ははっ、確かにな。だから、止め役でお前の親父と俺が居るんだよ。昔っから突っ走って周りが見えなくなるからな。」
あんな完璧という言葉が合う莉依さんが、周りが見えなくなるなんて。
そんなこともあるんだね。

