時間と経験、労力…か。
「俺たちはまだまだガキだ。間違うことも沢山ある。そんな経験の中で、自分のあり方や意味を知って大人になっていくんだ。」
大樹のまっすぐな瞳を見て、納得し、スッと言葉が入ってきた。
不思議だな。
同い年なのに、意志が強くてブレない。
これも清宮組の若頭としての力量なんだろう。
「お前がその意味を探したいのなら、鬼龍(ここ)にいるための理由にすればいい。鬼龍はそんなお前を追い返すほど廃れちゃいねぇ。」
「鬼龍に…いるための理由にする…。」
「あぁ。俺は鬼龍の頭として、そういう後押しが出来ればと思ってる。世に出ても恥ずかしくないように。」
「暴走族なのに?」
「…うっせぇな。」
不貞腐れたようにそっぽを向く大樹。
そこから見えた耳が少し赤かったのは、寒さのせいか、恥ずかしさのせいか。
ここまで真っ直ぐみてくれて、真っ直ぐぶつかってくれる人は初めてだ。
私の知っている大人はこんな言葉を掛けてくれたことがない。
だからなのか…、ここを離れたくないと心が強く叫んでいる。
例えそれが叶わぬ夢だと知っていても、願ってしまいたくなる。
この先、"貴方の隣にいたい"…と。

