「私をすぐ助けられるように最善を尽くしてくれたのでしょ?こうして助かったのは大樹のお陰だよ。」

振り向きながら話すと、何故か私の顔を凝視する。
そしてみるみる内に鬼のような形相になっていった。

「え?え?何?」

「もう一度ぶん殴ってくる。」

「え!?どうしてよ!?」

どうやら、私の口から血が出ていたのを見て切れたらしい。

「いやいや!もう伸びてるし!」

「そうよん。仁が後始末してるから、あんたはゆーちゃんね。」

え?
大樹は私?

何か怒られるの?
確かに自分の判断で動いちゃったけど、私は鬼龍のメンバーではないし…。

大樹が近づいて来たので思わず身構えてしまったが、そんな事関係ないというかのように、ヒョイと私を抱き上げた。

おおおおおお姫様抱っこぉ!?

「お前が思ってる以上に怪我してる。お前を優先するぞ。」

「もー、素直に心配してるって言ってあげればいいのにさ。」

トクン…。
トクン…。

心臓の音が私の身体中に響き渡る。

お姫様抱っこが恥ずかしいはずなのに、どこか安心している私がいる。
明確になっているのは、私が素でいられていること。

彼らの前に来たときは、虚勢をはり"女だから"って嘗められないように必死だった。
だけど、私はいつの間にか気を許せるまで彼らに心を開いていたのかもしれない。

あまりにもそれが心地よくて、自然と瞼が閉じていった。

「あら。相当疲れてたのね。」

「うん、緊張の糸が切れた感じだね。」

「というか、大樹が女を大事そうに扱ってるのみると変な感じだな。」

「光輝もそう思う?アタシも表情が柔らかくなったわよねぇ。やっぱり、お赤飯炊かないとかしら。」

「茶化すな。ウゼェ。」

そう言って私を運んでいた大樹の表情は、私は知らない。