意を決して言葉を紡ぐ。
「鬼龍ってご存じですか?」
私の言葉に、おじいさんば少し顔をこわばらせた。
"鬼龍"
その言葉をよそ者がなぜ知っているのかと言うような表情だ。
「すみません。言ってはいけないことでしたか。」
「いえいえ。そこにお捜しの方が?」
「はい。鬼龍とは一体何ですか?」
「おや、鬼龍をしらない方でしたか。鬼龍とは、正統派の暴走族でございます。」
暴走族!?
私は豆鉄砲を撃たれた感覚になっていた。
暴走族ってあの暴走族!?
バイクやら改造車やらで煩く走るグループでしょ!?
わ…私、今凄くテンパってるわ…。
そんな暴走族のところに詩月が…。
手を出されたりしてないか、ものすごく心配になってきた。
私が凄い顔をしていたからか、おじいさんは柔らかい笑みを返しながら説明を続けてくれた。
「悪い方ではないようですね。先ほども言いましたが、鬼龍は正統派の暴走族。女、子どもには手を上げない素晴らしい方々でございます。心配されているようなことはございませんのでご安心くださいませ。」
思わず苦笑いをしてしまう。
そんな簡単に心を読み取られていたとは。
最後の一口を飲み終えた。
ごちそうさまでした。
と言おうと思ったら、カランカランと音が鳴った。
私が先ほど入ってきた扉からの音だった。

