…払った!?
何故に?
私が払うべきお金なのに、どうして彼が…。
私がアタフタしていると、荷物の軽さに驚いたのか、目を丸くしながらこちらを見た。
「お前…、こんな少ない荷物で来たのか?」
「そうよ。元々長居するつもりはなかったから、必要最低限の荷物だけよ。予想外のことが起きて、私どうしたら良いか頭が回らないわ。」
すると、頭上から吹き出す音がした。
そこには大樹さんが笑っていた。
しかもお腹を抱えて。
「な…何よ。」
「お前、冷静に話すわりに焦ってんのな。顔に似合わず。ははッ。」
「私をなんだと思ってるのよ!ちゃんと感情はあります!失礼な人ね!」
私たちのやりとりをみて、ハラハラする人や、やれやれとため息をつく人がいた。
「ま、それがお前っぽいんじゃね?休暇だろ?長居しないと言わず、ゆっくり羽伸ばせよ。」
!?
今この人なにした!?
私の頭を撫でたよ!?
不意打ちでやられた"頭ポンポン"。
不覚にも胸が高鳴ってしまった。
その胸が高鳴ってしまった想いを打ち消すように、私は頭を左右に振る。
私のやるべきことは1つ。
「一刻も早くとりかからないと。」
そんな私の言葉は、木々の揺れる音に消されていった。

