手に握られたものをみると…

「連絡先…。」

どうして連絡先なんて…。
今日始めて会った相手に、サラッと渡しているのに驚き戸惑っていると、莉依さんの息子さんが近づいてきた。

「あぁ言ったら聞かねーんだよ。貰っとけ。」

そう言って大きなソファーにドカッと座る。

「で?ここに何しに来たんだ?」

この人、さっきチビって言ったのよね?
もー。
何事もなかったのように話しやがったわ。

なら私も何事もなかったかのように話すわ。

「休暇をいただいたので、家には内緒で詩月に会いに来ました。」

そう告げたあと、自分は名乗っていないことに気が付く。

まぁ、下の名前は莉依さんが言ってたけど。

「申し遅れました。私、北園結月と申します。この度は妹の詩月が大変お世話になり感謝します。」

「詩月を連れ戻しに来たのか?」

はい?
連れ戻しに?

「何でそうなるの…。まぁ、暴走族って聞いたときは、私のもとに連れ戻してやろうとは考えたけれどさ。」

おどけたように言うと、詩月は本当に信じられないかのような感じで話してきた。

「お姉ちゃん、違うの?」

「純粋に休暇をって言ってるのに信じてないのはどこの誰よ。ただ、顔がみたかっただけよ。」

そう告げ、詩月に笑みを向ける。

まったく。
真実は伝えられないけど、休暇をもらったのは変わりはない。

信じてもらえなくても秘密を突き通さなければ、結果に結び付かない。