私がそう考えていると、この部屋の奥の扉がバタンと勢いよく開いた。

「うるせーな。」

声の主に振りかえると、思わず魅とれてしまった。

この世のものとは思えないほど…顔のパーツが整ってる。

今までに会ったことがないほどの美しい人。

私が固まっていると、隣にいた莉依さんが怪訝そうな顔をして言い放つ。

「まぁた寝てたの?あんた総長でしょ?しっかりしなさいよバカ息子。」

男の人は莉依さんの顔を見るなり目を見開いた。

「お…お袋!?って、そのチビ、誰だよ。」

すぐさま向けられた視線。
莉依さんのときと同じ殺気。

頭の先から爪先まで、凍てつくような恐ろしさ。
…もしかしてこの人が?

「私の息子、清宮大樹ね!」

莉依さんは眠そうな男の人を指差して紹介してくれた。
だけど、そう言われたとたん一つの疑問が浮かび上がった。

あれ?
莉依さんの名字って姫野じゃなかったっけ?

なのに息子の名字は清宮…。

「使い分けてるのよ!こっちの街では、清宮組の姐。隣町では組長ね!で、こちらの女の子は結月ちゃん。詩月ちゃんのお姉ちゃんよ!あとはよろしくー!」

去っていく背中を見送るように目で追ったあと、莉依さんは心が読めるのか?と、そんな突っ込みを心のなかでした。

が…、数秒して莉依さんは戻ってきた。

「いけないいけない、忘れてた。」

私のところに来て手を握った。

「ここで解決できなかったら、いつでも連絡ちょうだいね?必ず力になるわ!」

そう言って爽快に帰っていった。
嵐のような人だわ。