さ迷った。

降りつぐ雨。

俺は濡れる。

寒くはなかった。

ただ冷たかった。

何故あの時。待合室で逢ってしまったんだろう。

『会いたくなんかなかった....』

不思議と涙が流れた。

そっと瞳をつむり、肌で泣くのを感じた。

落ちた滴は雨に混じって消えていった。

パラパラと音は周りに響く。

頭がぼおっとする。

そこには、雨の音と自分の心音しか聴こえなかった。

突然、雨が頬を濡らさなくなった。

まだ周りには、雨の音が響いている。

『泣いてるの?』

聞き覚えのある声に目を開ける。

『....』

昨日の人が立ってた。

俺は応えなかった。

『来て。』

彼女は俺の腕をひっぱった。

高級マンションへ着く。

言われるままに部屋へ上がり進んだ。

『今日は素直ね。』

『....何がしたいの?』

まだびしょ濡れの俺に彼女はバスタオルを渡した。

『宗哉君と居たいだけよ。』

『そう....』

俺は返す。

『何で?』

『分からない』

『ふうん』

彼女は俺をバスルームへ押す。

『入って来て。風邪引いちゃうわ』

頭がガンガンしてた。

『....?顔色変よ?』

彼女は俺の額に手を添える。

冷たかった。

目を閉じると体が浮く気がした。

『え、ちょ。宗哉君?大丈夫?宗哉君!』

あの人の声が遠く掠れた。