ギュッと抱きしめる。

『うん』

彼女は頷いてくれた。

二人でベッドに腰かける。

『...私、誠さんに断ってくる。』

『?隼美』


『待ってて。...』

隼美は、俺を抱きしめた。

震える手。

『待ってる。』

俺は抱きしめ返した。




俺と隼美は、マンションを出た。

少し歩くと、向かいから男が走ってくる。

背が高く、精悍な顔立ちをしている。

『隼美さん....』


男は隼美の前で止まった。

『誠さ...』

誠?この人が?

『この青年は?』

『....誠さん。お付き合いの件ですけど』

男は俺を睨む。

『この青年にたぶらかされてるんですか?』

男を睨み返す。

『たぶらかす?』

俺はカチンときた。


『違う、私が好きになったの...そんな風に言わないで..』

俺は隼美を見つめた。

男は一瞬表情を曇らせた。

『..っ、兎に角だ。隼美さん...貴女は自分の立場をお分かりですか?』

隼美の立場?

『.......分かっているわ...』

隼美の顔色が変わる。

立場って何だ?