「ありがとう、僕らの家を褒めてくれて」

 ちいさなドラゴンが、すいーっと上の方から降りてくる。その姿にチカがぴょんぴょんと跳ねて喜んだ。

「あのね! たまご、つれてきたの!」
「……本当だ! 母様たち! みて!」

 それまでどこにいたのか、大きなドラゴンも姿を見せてチカの持ってきた荷を見る。

「やぁやぁ。よく無事で!!」
「本当に、本当に。ここまでよく」

 口々にドラゴンが感謝と労いを伝えてくる。それにチカはご満悦だ。

「それで、その、その卵の親が―――」

 そこまで言いかけて言いよどむ。ここにくるまでにかなりの日数がかかっている。生きているかどうかは、わからない。それに、そのドラゴンを攻撃していたのは―――

「ちょっとすまない」

 一匹の青いドラゴンが鼻先をハヤトの額に近づける。すると首にかけていたドラゴンの智慧が輝き出した。

「なるほど、大体のことは理解した。面倒なことを押し付けてすまなかったな。大変な目に遭ったであろう」
「いえ!」
「隠さずともよい。この石が教えてくれた」

 本当にすまない、と首を垂れるドラゴンに、チカが駆け寄る。

「すごくたのしかったの! いっぱいたすけてもらって、おもしろかった」
「ならばよいのだが。たくさんの重荷を、そなたの兄には背負わせてしまったようだ」
「……!」
「慣れぬ土地で、よく頑張ってくれた。ありがとう」

 ドラゴンはその大きな翼でハヤトを包む。どこか安心感のある温もりに触れて、これまで我慢してきた涙が零れ落ちた。

「そなたらは強く、賢い。勇気在るものたちだ。お陰でほら、卵をみるがいい」
「あ、罅が」
「卵は温め続けねばならない。旅の間、そなたたちが世話してくれたおかげだ」

 ありがとう。

 ドラゴンが一声啼くと、他のドラゴンたちも呼応するかのように声をあげる。その声が周りを囲むクリスタルに反射して、卵へと降り注ぐ。