どれだけの距離をいままで歩いてきたのかわからない。たくさんの昼と夜を繰り返した。

 青の洞窟があるという岩壁を前にして、これまでのことを振り返る。

「これ、どうすればいいんだ……」

 手を伸ばせば届くかもしれない位置にとっかかりはあるけれど、これではチカに届かない。ほぼ絶壁といっていい場所を登っていく競技があるのは知っているけれど、これは……。

 ハヤトは何度かその岩壁にトライしてみるが、ジャリジャリという音を立てて落ちてしまう。これはどうしたものだろうか。

「岩壁を登る方法、無いかな」

 一か八か石に訊いてみるが、何の反応も示さない。

「青の洞窟の場所は?」

 その問いかけには真直ぐ上を示すのだから、壊れている訳ではないらしい。リュックを背負ったチカをその場に待たせて、ハヤトは何かないかと辺りを見回す。

 木々の間に太くて丈夫なツタを見つけて、これをロープにしようと思い立つ。何本かより合わせて更に強度を上げたが、肝心の上に引っ掛ける方法が見つからない。試に何度か上に向かって投げてみるのだが、何にも引っかかることなく、重力に逆らえないまま落ちてきてしまう。

「おにいちゃん、おおかみさんはこのがけのぼれる?」
「どうだろう……? 確かに急な足場の悪いところも移動してたけど」

 この垂直具合はどうなのだろう。改めて崖を見る。