自然と目が覚めたときには、チカはもう起きていた。

「おにいちゃん、おはよう」
「あぁ、おはよう……っていってもいい時間かわかんないけど」
「まだ太陽は真上には来ていませんよ。どうぞ、少ないかもしれないですけど食べてください」

 差し出してくれたのはふかふかのパンと木の実のスープだった。

「仲間が偵察に行ってきたんですが、ヒトは少し離れた場所へ移動したみたいです。これを食べたら私たちの道の端まで案内しますね」
「ありがとうございます。お世話になります」
「困ったときはお互い様ですから。ドラゴンの卵、無事に運んでください」

 小人たちは本当にドラゴンのことを大切に想っていることが解る。それに協力するハヤトたちのことも、助けようとしてくれる。

「ドラゴンさんって、やさしい?」
「えぇ。とっても。私たちに食料を分けてくれますし、背に乗せて移動もしてくれます」
「へぇ」
「私たちが世界中の色々な所に住んでいるのは、ドラゴンのお陰なんですよ」

 お茶のおかわりをついで、小人はにこやかに話す。小人たちはドラゴンの細々としたお手伝いをすることもあるんだそうだ。

 そんな話を聴きながら腹を満たすと、不思議と力が湧いてくる。ここで関わった生き物たちはとても親切で、ドラゴンの卵をかえすために手を貸してくれる。ボクらがやっていることは意味があることなんだ。

 ハヤトは拳を握って勢いよく立ち上がった。

「もう少し行ったら岩壁があります。その岩壁を上った中腹に、青の洞窟はありますよ」
「本当にありがとう」
「ごはんおいしかった!」
「はい、またいらしてください。あなたがたなら歓迎しますよ」