石に尋ねた方角へ歩いていくと、深い深い森の中を歩くこととなった。

 幸いにして追っ手の姿は見えないしゆっくりと歩いてもいいのだが、何せどこまで歩けば辿り着くのかわからない。心細い。

 知らない道は疲労が溜まりやすい。心が折れそうなハヤトをよそに、チカはずんずんと進んでいく。

「チカ、重くないの、それ」
「うん! ドラゴンさんとやくそくしたから、わたしがつれていくの!」

 妹のその意志のこもった言葉に苦笑しつつ、ハヤトは辺りを見回す。

 木々が生い茂り、空はほとんど見えない。陽の光が届かないせいか、薄暗くてじっとりとしている。何時間も歩いていると喉が渇くが、水の在りそうなところは見当たらない。

「おにいちゃん、おなかすいたねぇ」
「ん、そうだなぁ」

 小人の里でわけてもらったパンを袋から取り出して、もごもごいう。やっぱり飲み物が欲しい。

 食べられそうな水分のある実はないかと探していると、石が光を放ち分散する。そしてその光を受けた果実が淡く光った。

「これ食べられる、ってこと? こういう使い方もできるのか」

 見たこともない果実をとれば、光は消える。口に含めばとても甘く、果汁がたっぷり入っていた。  

「おにいちゃん、わたしも!」

 少し高い所にある果実だったので、妹は自力で取ることはできない。背伸びしてそれをとり、渡してやる。